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1.患者情報一元管理 カルテやレセプトデータベース化/京都府
2.京大iPS欧州特許 出願3年、地道な交渉 特許権荒らされる懸念薄まる
3.ADA欠損症、国内初の遅発型を診断
4.埼玉医大、ES細胞で多能性維持の仕組み発見 がん化回避に期待
5.皮膚疾患の小型治療器、渋谷工業など開発
6.「トラウマ」の一端解明 恐怖が神経細胞のつながり変える
7.全壊した福島の保科病院、破産寸前から再生までの軌跡
8.東京で在宅専門診療所を経営していますが、被災地石巻でも開業します
9.支援医師を被災地に送り出すための裏方仕事
10.震災後に高齢患者が急増した宮城県気仙沼市
11.SAH好発部位、コイルは34% 「どちらとも言えない」が44%と高率
12.脳出血治療中の患者にセレコックスを処方してヒヤリ!
13.携帯電話の発癌リスク、エビデンスは限定的
14.高用量スタチン服用者は糖尿病発症リスクが12%上昇
15.看護師が少ないと院内死亡率が高い
16.STEMI患者でDIDO時間が30分超は、30分以下に比べ院内死亡率が約1.6倍に
17.ハイリスク中高年男性への肥満手術、死亡リスク減少せず
18.鎌状赤血球症患者の肺高血圧症、カテーテル検査による有病率は6%
19.急性心不全患者へのnesiritide、再入院や死亡率を改善せず
20.HIV感染者の潜伏性結核、新規レジメンに優位性なし、南アフリカ調査
21.糖尿病診断時の糖尿病性ケトアシドーシス、複数の要因が関係
22.1型糖尿病へのリアルタイム持続血糖モニター、HbA1c値の低下と関連
23.Adherence to Angioplasty/Stent Guidelines Lacking: Study
24.Psoriatic Arthritis Patients Seem to Lack Enough Vitamin D
25.Sleep Apnea Linked to Blood Vessel Disorders in Study
26.Study: Potassium Boosts Heart Health, Salt Harms It
27.Coordinated Cooling Effort After Cardiac Arrest Can Improve Outcomes
28.Parkinson's Patients Still Prescribed Antipsychotics Despite Warning
29.JMM:原発作業員・福島県民の声
30.<速報>新潟県内のA事業所で起きた風疹感染
31.<速報>1年にわたる気管支炎・肺炎の流行と検出ウイルスの推移―秋田県
32.ブタの日本脳炎HI抗体保有状況調査-2011年速報第1報-
33.腸管出血性大腸菌感染症発生状況(速報) 第26週
34.米国産のウシ由来の原材料を使用している医薬品等について
35.平成22年国民生活基礎調査の概況
36.プレスリリース
1) がん細胞による免疫応答抑制の新たな仕組みを解明
2) World's First SVM-Based Image Analysis iPhone App for Melanoma Risk Assessment, MelApp, Launched by Health Discovery Corporation
3) 「痔の大規模患者調査」受診率は4割、誰にも相談せず一人で悩むのも4割
4) 医薬品による副作用情報を電子カルテから抽出する技術を東大病院と共同開発
5) 電子カルテの入院経過表に血糖測定データを転送するシステムを提供
****************************************1.患者情報一元管理 カルテやレセプトデータベース化/京都府
京都新聞社2011年7月12日
京都府は、府内の医療機関が持つ患者のカルテやレセプト(診療報酬明細書)の情報を一元的に集約、管理する「京都医療データベース」(仮称)の構築に乗り出す。情報の一元化で医療機関の連携がスムーズになり、検査の重複回避や医療費の抑制にもつながるという。都道府県単位での医療情報の共有化は全国に例がなく、府は関係者による協議会を本年度に立ち上げ、実現を目指す。
■検査の重複回避
カルテ情報は各医療機関が管理しているが、府内全域でデータベース(DB)化して活用すれば、診療情報の共有で転院や患者紹介が円滑になり、患者が同じような検査を何度も受けることや薬の過剰処方も避けられる。
また、レセプト情報は健康保険の種類によって保有機関が異なるが、DB化して分析すれば、地域ごとに多い病気の傾向なども把握でき、医療政策にも生かせる。
すでに、京都大付属病院(京都市左京区)と京都医療センター(同市伏見区)がそれぞれ中心になって診療情報をDB化し、効果をあげているという。
個人情報保護の観点から、DBへの登録は患者の同意が必要になるとみられ、患者によって情報アクセス可能な医療機関を制限する方向で構築していく。
実現には、民間を含めた医療機関の協力が不可欠なため、府は本年度中に病院や医療団体、大学などによる協議会を設置し、2013年度までに診療情報のDB化を目指す。レセプトDBも同年度までにつくり、将来的には二つを統合した京都医療DBを確立する。
府は構想を盛り込んだ府地域医療再生計画案を厚生労働省に提出している。認められれば最大で3億2500万円の交付金を受けられるため、厚労省に採択を強く求めていく。
府医療企画課は「医療現場で使いやすいデータベースを構築することで、参加する医療機関を増やしていきたい」としている。
2.京大iPS欧州特許 出願3年、地道な交渉 特許権荒らされる懸念薄まる
産経新聞社2011年7月12日
京都大は11日、山中伸弥教授が世界で初めて開発した、さまざまな組織や臓器の細胞になる能力のあるiPS細胞(人工多能性幹細胞)の作製技術について、欧州で特許を取得したと発表した。
京大は出願から約3年を経て、数多くの研究者を抱え市場規模も大きい欧州におけるiPS細胞の、作製技術の特許取得という高い「壁」をようやく越えた。iPSの特許は、京大の山中伸弥教授が日本で取得して以降、類似技術を開発した米国など海外で特許申請が相次ぎ、iPS技術の特許権が"荒らされる"ことへの懸念も出ていた。
だが京大は、iPS技術が競合している米ベンチャー企業の保有する、英国や米国で成立した特許を含む世界各国で出願済みの約30件の製造技術に関する特許などについて交渉を重ね、今年1月に無償譲渡を受けることに成功し、最大のライバル企業との係争を回避。また欧州の特許事務所の意見を取り入れながら、現地の法律を踏まえて出願書類の内容を丁寧に検討。その上で、地道に欧州特許庁とも交渉を重ねてきた。
欧州特許の成立は、特許の出願や登録に必要な、国からの多額の資金援助があったからこそできたことでもある。11日の会見で山中教授は「大学が、国の支援を受けながら一体になることができた」と分析した。今後も新技術について、特許を成立させていくためには、大学関係者が一枚岩になるだけではなく国の継続的な支援も必要不可欠だ。
京大の特許成立により、欧州で特定企業が特許を悪用し法外な権利料を得る事態に至る懸念も回避された。最大の市場である米国での特許も成立の公算が大きく、これで再生医療や創薬の分野でiPS技術の実用化に弾みがつきそうだ。
【用語解説】iPS細胞
細胞を、さまざまな種類の細胞に成長する前の初期状態に戻し、受精卵のように多様な細胞に成長する能力を、改めて持たせたもの。山中教授が4つの遺伝子を皮膚細胞に注入する手法で初めて作製し、その後、遺伝子の数を減らすなどさまざまな作製法が発表された。再生医療に用いる場合は、がん化のリスクをなくす作製法が必要。病気の仕組み解明などへの応用も期待されている。
【用語解説】欧州の特許制度
欧州特許条約加盟国(現在38カ国)では、欧州特許庁に出願する方法と、各国に出願する方法がある。欧州特許庁で特許が認められると、特許権を有効にする国を選択できるが、国ごとに特許の登録料が発生するため、通常は必要な国だけで登録することになる。複数の国で特許権を得たい場合、欧州特許庁に出願すると審査が1回で済む。だが、例えばドイツならドイツ1カ国だけで特許権を得たければ、直接、ドイツ特許庁に出願した方が出願料は安く抑えられる。
3.ADA欠損症、国内初の遅発型を診断
読売新聞社2011年7月12日
富山大学付属病院(富山市杉谷)は11日、免疫が正常に機能しない難病のADA欠損症(重症免疫不全症)で、1歳以降に症状が出る遅発型を国内で初めて診断したと発表した。
患者は県内の男児(4)で、今年3月に骨髄移植を受けて免疫機能がほぼ正常に戻り、現在は通院治療を続けているという。
ADAは「アデノシンデアミナーゼ」と呼ばれる酵素で、欠損すると病原菌に対する免疫が正常に機能せず、風邪でも容易に肺炎を併発するなど重症感染症にかかる。これまで国内では、1歳前に同感染症にかかり、骨髄移植などを受けないと死に至る症例が報告されていた。5万~10万人に1人が発症するとされ、過去に約20例の報告がある。
診断した金兼弘和・同病院小児科講師によると、欧米の研究では、1歳未満で重症感染症にかかる早発型が欠損症の85%を占め、遅発型は15%。遅発型は、症状が比較的軽い気道感染症などで、抗菌薬などで治療ができるため、見逃されてきた可能性もあるという。同病院は今回の症例を8月に東京で開かれる日本小児科学会で発表する予定。
4.埼玉医大、ES細胞で多能性維持の仕組み発見 がん化回避に期待
日経産業新聞社2011年7月12日
埼玉医科大学の奥田晶彦教授らは、胚性幹細胞(ES細胞)で特定のがん関連遺伝子が働かなくても、様々な細胞に分化できる能力を保てることを突き止めた。細胞培養の条件を工夫すればよいという。この遺伝子は、新型万能細胞(iPS細胞)をがん化させる危険性が指摘されている。万能細胞の医療応用時の安全性向上などに役立つ可能性がある。
成果は米科学誌「セル・ステムセル」(電子版)に掲載された。ES細胞やiPS細胞の特徴である多能性の維持には、c―Mycというがん関連遺伝子の働きが不可欠と考えられてきた。
5.皮膚疾患の小型治療器、渋谷工業など開発
日本経済新聞社2011年7月12日
渋谷工業は皮膚治療が専門の名古屋市立大学の森田明理教授と共同で、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の小型治療器を開発した。医療機器の商社などを通じ、17日に発売する。人体への影響が少ない波長の紫外線を当てる仕組みで、患部が狭い患者の治療に向く。1台1.5キログラムで携帯できるため、往診にも利用できる。
新製品「TARNAB(ターナブ)」は手で機器を握りやすくするためドーナツ状にした。紫外線の光を出す部分の面積は16平方センチメートル。皮膚の敏感さは個人差があるため、光を当てる時間は1~120秒の間で調整できる。価格は1台400万円。初年度に100台の販売を目指す。
すでに薬事法で定められた登録認証機関から医療機器の認証を取得した。厚生労働省から保険の適用を受けられるよう申請済みで、最短で8月上旬には認められる見通しだという。
これまでの治療器の多くは半身や全身に光を当てる大型の機器が主流で、持ち運びが難しかった。患部が狭い場合には、患部以外を黒い布で覆い、光を遮るなどの工夫が必要だったという。
6.「トラウマ」の一端解明 恐怖が神経細胞のつながり変える
日本経済新聞社2011年7月12日
横浜市立大学の高橋琢哉教授らは、強い恐怖や嫌悪など「トラウマ」となる記憶ができる仕組みの一端を解明した。怖い体験をすると脳の海馬という部分で神経細胞のつながりが強化され、記憶がつくられることをラットで確認した。心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの研究に役立つ成果。米科学アカデミー紀要(電子版)に12日掲載される。
ラットを実験用の箱に入れて特定の場所に来たときに電気ショックを与えると、恐怖の体験が脳に記憶されラットは同じ場所に近づかなくなる。この記憶には海馬の神経細胞が関与しているが、詳しい仕組みは分かっていなかった。
高橋教授らは海馬の神経細胞どうしがつながる「シナプス」の部分に注目、恐怖が記憶される際の変化を調べた。恐怖体験後にシナプス表面で情報の伝達に関わる「AMPA受容体」というたんぱく質が増え、強く信号が伝わるように変化していた。AMPA受容体がシナプス表面にできないようにしたラットでは恐怖体験の記憶がつくられなくなり、再び電気ショックのある場所に近づいていくことも確かめた。
強いトラウマとなるような記憶は人間ではPTSDや対人恐怖症などを引き起こす。仕組みの解明は治療法の開発につながる可能性がある。
7.全壊した福島の保科病院、破産寸前から再生までの軌跡
Nikkei Business2011年7月12日
7月11日、東日本大震災で全壊し休業していた福島県内の病院が新たなスタートをきった。移転してプレハブの仮設建物を建て、外来・入院患者の受け入れを始めたのだ。被災後4カ月で再生への第一歩を踏み出せた原動力は、地元の大手民間病院による積極的な支援だ。
南東北新生病院はプレハブ建て(民家の後ろに見える白い建物)で再スタート
「理事長になって、最初の仕事が職員全員の解雇。悔しかった。潔く破産の手続きを取ろうかと考えた」。7月11日に開院した南東北新生病院(福島県郡山市)の院長、松本秀一氏は、9日に行われた開院記念式典でこう語った。
松本氏は、東日本大震災の当日、郡山市中心部にある医療法人保科病院で院長を務めていた。65年の歴史と伝統を持つ同病院は、主に慢性疾患の高齢者を受け入れる中規模の病院として、地域医療の一翼を担っていた。それが震度6弱の地震に見舞われて建物が使えなくなり、休業に追い込まれた。郡山市による応急危険度判定の結果は、建物上部が倒壊する恐れのある「危険」だった。
建物が使えなくなった保科病院は、廃止の瀬戸際にあった
松本氏らは復旧の道を探ったが、結局、自立再建は断念せざるを得なかった。
ところが、これまで患者を紹介してくれていた、同じ郡山市の民間病院、南東北グループにあいさつに行ったとき、思わぬ提案を受けた。同グループが経営する総合南東北病院の北側の土地に、仮設の病院を建てて保科病院を再建してはどうかというのだ。南東北グループは、日本で数えるほどしかない陽子線によるがん治療を手がけるなど、積極的に事業を展開している民間病院として知られている
「2年以内に免震構造の新病院を」
郡山市では、東日本大震災の影響で別の大手民間病院の病棟も使えなくなっていた。そこへ、福島第1原発の事故が加わり、沿岸部から患者が押し寄せ、どの病院も入院患者の受け入れに苦労していた。
その上、郡山市には保科病院のような慢性疾患の患者を対象とした療養型の病院は少なかった。その一つがなくなれば、総合南東北病院のような救急患者などを対象とする病院にも高齢患者などが殺到、救急医療に支障が生じる怖れがあった。保科病院の存廃は、南東北グループにとっても地域医療全体にとっても"死活問題"だったのだ。
南東北新生病院の病室。全部で156床のベッドを持ち、内科、循環器内科、消火器内科、呼吸器内科を診療科目に掲げる
松本氏は、その後1週間考え抜いたが、南東北グループがヒト、モノ、カネにわたる全面的な支援を申し出たことを受けて、同グループの傘下に入り、再出発することを決意した。そして2カ月ほどの突貫工事で開院にこぎつけたわけだ。
もちろん、これは再生への第一歩に過ぎない。仮設病院は2年間しか使用できないため、その間に新病院の建設場所の決定や設計・工事を行わなければならないからだ。
開院式であいさつした南東北グループ理事長の渡邉一夫氏は、「郡山には、療養型を中心とする病院は少ないから、保科病院はぜひ残したかった。2年以内に立派な新病院を建設したい。コストが2割増しになってもできれば免震構造にする」と意欲を見せた。
震災で大きな被害を受けた宮城、岩手、福島の3県のうち、福島県は、民間の大病院が多いという全国的にも特徴のある地域だ。病院を建設する財政的な余裕がない自治体が多いことを踏まえ、かつて、県が病院を経営するための財団法人設立を積極的に認めたからだ。財団法人の病院であれば法人税などが免除され、その分、設備投資に資金を回すことができ、事業を拡大しやすい。
こうして成長した民間病院が地域医療の中核を担っていたことが、4カ月という短期間で、被災した病院の再スタートを可能にした大きな要因だとみていいだろう。
開院初日には、旧保科病院のかかりつけ患者を中心に、午前中だけで20人ほどの外来患者が訪れたという。
8.東京で在宅専門診療所を経営していますが、被災地石巻でも開業します
被災した開業医が「再開は無理」と勤務医になる中、医療提供体制整備目指す
祐ホームクリニック院長 武藤真祐
日経メディカル2011年7月12日
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